nissoudan
創建から1,200年以上の歴史がある京都・清水寺。
その境内の入り口近くに建つ西門(さいもん)は参道から少し外れた場所に位置していることからも、
かつてから「通行用の門」というより「祈りの空間」であったことを思わせる。
実際、西門から見た夕暮れ時の洛中の眺めが、
仏教で西方にあるとされる理想郷「極楽浄土」を思わせる美しさであったことから、
「日想観(にっそうかん)」と呼ばれる修法の場として使われていたと伝えられている。
日想観とは、静かな心で夕陽を見つめることで自身の内面と向き合い悟りを得る方法で、
僧侶だけではなく一般の人々にも広まった。
ただ、現在はこの門に立ち入ることはできなく、門へと続く階段の途中までしか登ることはできない。
そこで、西門が持つ本来の意味を感じてもらえるようなインスタレーションをデザインしたいと考え、
38段ある階段を一段ずつ鏡で覆うことに。
段ごとの鏡の角度はデジタルシミュレーションと現地での実証実験を繰り返すことで割り出し、
設置時には個別の鏡の角度を微調整ができる機構も内部に組み込んだことによって、
来場者自身の姿や周囲の建物が極力映り込まずに、空のみが階段に浮かび上がる。
アクセスできない状況を逆手に取った結果として、
通常は西門からしか見ることのできない夕景を、階段の下から眺められるようになった。
日想観を表現している階段であることから「日想段(にっそうだん)」と名付けた。