michiwan

樂家初代長次郎が手掛けた「長次郎茶碗」などに代表される、
樂焼の大きな特色のひとつが茶碗の「内部」と言われている。

「樂茶碗の半筒形の姿は、特に口縁を内にわずかに抱え込むことで、見込は内包的な深みをもった空間となる。
その深々とした見込は、単なる寸法を超えて精神的な宇宙を抱えることになる。」
(引用:『[定本]樂歴代 宗慶・尼焼・光悦・道樂・一元を含む』)
と樂直入は言う。

ただし、この「内包的な空間」を通常の展示された状態で感じ取ることは難しい。
そこで、茶碗の内部空間を3Dスキャンしたデータをもとに透明アクリルを切削加工することで、
本来は「空洞」である存在を、ひとつの「塊」として再現した。

オリジナルの茶碗と、茶碗の内部が象られたものがふたつ並ぶことで、まるでレントゲン写真のように、
普段は知覚することができない内と外の関係性が浮かび上がる。
茶碗の内部を水で満たして、それをそのまま取り出しかのような見え方から「満碗(みちわん)」と名付けた。

Collaborator:
Arata Nishikawa
Photographer:
Akihiro Yoshida