jihada
展示台の上ではなく、茶碗が「日常性が感じられる空間」に溶け込む見せ方の可能性を
樂直入氏に問われ、着想したインスタレーション。
まずは、本棚や引出し、扉、窓といった身近な家具や建具をセレクトし、
さらに食器やピクチャーフレーム、瓶、缶、本、置き時計などの生活雑貨を選び出した。
それらの形状を抽象化し、仕上げもマットブラックに統一にすることで、
生々しすぎる日常を想起させないようにしている。
これらのオブジェを再構成して作った「最小単位のインテリア空間」に樂茶碗を配することに。
より茶碗を空間に馴染ませたいとの思いから、茶碗の表面テクスチャーを3Dスキャンし、
それを部分的にオブジェに「移植」した。
テクスチャーは0.25~3倍の範囲で縮小拡大させることで、
うねる水面や荒々しい山肌、はたまた樹皮のようにも見えるなど、
茶碗に内在している多様な表情を引き出すことが可能となった。
最終的に5つの小さな空間が作られ、
それぞれに使用されるテクスチャーは、そこに置かれた茶碗から抽出されたものとした。
それはまるで苔や樹木の根が周囲の環境を覆い尽くすかのごとく、
茶碗から滲み出た地肌が空間に纏わりつくような表現となった。