KASHIYAMA DAIKANYAMA

大手衣料品メーカーとして知られるオンワードが創業以来、数々の環境・社会貢献活動、
リゾート施設や飲食店の運営、若手クリエーターの発掘や育成、そして、スポーツや演劇への支援活動など、
さまざまな生活文化事業を行なってきていることは意外と知られていない。
こうした活動の情報発信とコミュニティー形成、そしてそれを通じた新たな価値創造を
目指した複合型商業施設の総合デザインプロジェクト。

B1Fにはカフェ、1Fは展示やイベントなどに利用できるギャラリーとラウンジスペース。
2Fと3Fはファッションやインテリア雑貨などを扱う物販エリアに、
パーソナルオーダーができるビスポーク・サービス用のアトリエを併設。
4Fには65席ほどのレストラン、そして最上階となる5Fには小さなバーがある。
飲食の監修は全てSUGALABOの須賀洋介氏が行い、物販のマーチャンダイジング計画は
OPENING CEREMONYのウンベルト・リオン氏と キャロル・リム氏の二人が担当。

建築デザインは、できるだけ代官山の街並みに馴染むように、ひとつの大きなハコとしてではなく、
複数の小さなハコを重ね合わせながら集合させた、まるで「小さな丘」のような建物に。これにより、
ハコとハコの隙間から不意に自然光が入ってきたり、視線が抜けて広がりを感じさせるなど、
変化に富んだ内部空間が生まれた。また、エントランスとカフェスペースを半地下に配置することで、
通りに立つと、上から俯瞰するように内部の様子や気配を感じることができる。
それぞれのハコの屋上は見晴らしの良いデッキテラスになっており、それぞれが階段でつながっているため、
自由に建物の外を歩きながら自然と上階に昇っていくことができる。このようにして、
できるだけ建築物としての威圧感や、心理的な入りにくさを軽減することに配慮した設計となった。

インテリアは、この建物が持つ空間的な特徴を強調することを考え、ハコ同士が「重なった」場所を
「重なった」素材で仕上げることに。B1Fの床は、通常の場所はそれぞれ異なる種類の玉砂利を
使い分けているものの、ハコが重なった空間にはそれらの玉砂利をひとつに混ぜ合わせて使用。
1Fはヘリンボーン調のフローリングとテラゾーを重ね合わせ、2Fはセメントにファブリックの
テクスチャーを押し付けて転写。3Fは大理石に別の種類の石の柄をプリントしたり、
ガラスに大理石の柄をプリントした。4Fと5Fも同様に、石材をフローリングと組み合わせた表現を用いた。

さらに外部のデザイン要素を内部に取り込みたいと考えた結果、デッキや外壁を積極的に
インテリアに使用することに。また、屋外に使われている手すりと全く同じ寸法の部材を使い、
家具や照明器具などをデザインしていった。 さらに、家具はできるだけインテリアに
使用しているのと同じ素材を使い、「重なり」を生かしたディテールを心がけることで、
「家具」「インテリア」「建築」という、3つのスケールの異なる要素が柔らかく
融合した空間体験となることを目指した。

施設名は1927年創業時の屋号「樫山商店」から、「KASHIYAMA DAIKANYAMA」と名付けられ、
代官山の新たな「丘の上のレストラン」として、フランス語で“丘”を表す「COTEAU.(コトー)」を
飲食エリアの名称に。サイン計画や広告物、そしてオリジナルグッズなどに使用されるロゴマークは、
「A」を「山」の形にしたシンプルなものにし、そして、「M」は「重なり合った山」にすることで、
建物の特徴を表現した。

Client:
ONWARD HOLDINGS
Collaborator:
onndo (interior)
hand (graphic)
Richard Bone (furniture)
Sayaka Ito (furniture)
Izumi Okayasu (lighting)
Kayoko Nagahama (plantation)
Photographer:
Daici Ano
Takumi Ota
Akihiro Yoshida
Filming + Editing:
Toru Shiomi
2019.04