diamond chair
ダイヤモンドは緻密で均質な分子配列のため、力や光を効率的に分散させ、
ダイヤモンド特有の硬さと輝きを生み出す。この配列をモチーフにした「軟らかいけど強い」構造体を
デザインし、外力に対して抵抗するのではなく、緩衝し吸収する、まるで人体の筋肉組織や器官のような
「しなやかな」イスを作りたいと考えた。
そこで、粉末焼結ラピッドプロトタイピング(RP)機を使い、3次元CADデータをもとにナイロンの粉体を
レーザーによって硬化させる方法で実現することにした。これにより、イスとして強度が求められる箇所の
部材は断面を厚くし、座り心地に影響する部分は徐々に薄くしていくなど、単一素材ながら部分ごとに
異なる機能を担わせることが可能となった。
また、RP機が一回で出力できる最大サイズが決まっているため、イスは上下で2分割し、パズルのように
組み合わせて制限サイズぎりぎりに収まるようにし、硬化後に接着することにした。
そうすることで、製造時間とコストを抑えると同時に、上下パーツが一緒に硬化することで熱による
収縮やひずみが同期し、接着時のズレの問題も解消された。
現段階では商品化は想定していないものの、約5日間という短い製造期間によって在庫リスクがなくなり、
また、海外からの受注であってもメールによるデータ納品で、現地のRP機で出力ができるため、
配送の時間とコストとも無縁のデザインであり、これまで家具産業が抱え続けた諸問題が
近い将来解決される可能性を示唆してくれるプロジェクトであった。