teppun

千家十職の釜師に数えられる大西清右衛門は、室町時代から続く京釜師の名跡。
茶釜の製造過程では、鋳造後にも多様な加工技術があり、
その一例として金槌で叩いて側面の羽を欠いて表情をつける「羽落(はおち)」や、
炭火で焼いて表面に酸化皮膜を施す「焼抜き」などがある。
その中でも注目したのが、鉄粉と漆を混ぜて加熱乾燥させたものを表面に叩きつける
「鈦心熱乾鉄漆(たいしんねつかんてつうるし)」と呼ばれる技術。
通常は傷や水漏れの補修やメンテナンスに使われる伝統的な手法だが、
この技術を用いて器のコレクションを作ることに。

まずは、チタンの粉末をレーザーで焼結させる方式の3Dプリンターを使い、複数のチタン製の器を作成。
湯釜がU型の断面形状を360° 回転させた形をしていることから、同じくU型の断面を使った回転体を製作した。
そして、端部を少しつまむことで、注ぎ口となって徳利や醤油差しとして使えたり、花や枝を支える花器になったりする。
最後に、十六代 大西清右衛門の手で「鉄漆」によって仕上げられた。

器の内側は鉄粉を減らすことでキメが細かく、
外側は鉄粉を増やすことで荒々しい表面になり、内外で異なる表情を生み出した。
3Dプリンターと伝統工芸技術という真逆とも呼べる技術の融合でありながら、
どちらにも「金属の粉末」を用いる共通点から「鉄粉(てっぷん)」と名付けた。

Collaborator:
Sherry Huang
Photographer:
Akihiro Yoshida(1-19)
Hiroshi Iwasaki(20-30)