JAPAN: Tradition. Innovation.
カナダ文明博物館にて開催された「Japan: Tradition. Innovation.」展の会場構成。
交通、ロボット技術、社会的地位、消費文化、娯楽、という5つのゾーン別に、
現代と江戸時代を対比させながら日本の文化とデザインの関わりを読み解いていく展示内容。
展示室が970㎡の大空間であることから、壁は一切建てずに、大小様々な屋根を異なる高さで
空中に浮かべることにした。そして、5つのゾーンを最低限認識できるように床面には
「地下鉄の路線図」のようなグラフィックによってゾーン毎に色分けを施した。
大きくて低い屋根の下は「閉じた」場所となり、複数の小さな屋根の隙間から落ちる
木漏れ日のような光によって「半屋外」のような領域も生まれる。
また、屋根の下から「屋外の展示品を見る」感覚や、逆に外から「屋内の展示品を覗き込む」ように
鑑賞するなど、内と外の関係性がめまぐるしく入れ替わる、多様性のある空間となった。
一見すると明確な動線が失われ、視覚的には乱雑に作品が立ち並んでいるようでありながら、
日本古来から存在する「間」や「仕切り」といった「見えない領域を生み出す」手法によって、
緩やかに空間を分節することを考えた。結果的に、本来の大空間からは均質さが失われ、
日本の都市空間のような雑然とした空間体験が生まれた。