pond dipping

池や沼などに生息する植物が、水や泥を吸い上げ、
その浸かった箇所だけが変色している様子は、さながら「自然界における染物」のよう。
均質に染め上げられた複数の色の糸を組み合わせ、織り方によって様々なパターンを生み出したり、
プリント加工によって柄を表現したりする現代のテキスタイルではなく、
「浸かる」だけでパターンを生み出すことを考えたテキスタイルデザイン。

まずは円筒に1本の糸を巻きつけ、半分だけ黒い染料に浸ける。
これをほどくと、染まって黒くなった部分と染まらずにそのまま白い部分が交互に現れる糸になる。
その糸を使ってテキスタイルを織ったところ、縞模様が生まれた。
同じ工程を、太さの違う円筒を使って行うことで、糸の染めパターンの繰り返し周期と、
織られる際に糸が往復する周期とにズレが生じ、それにより織柄が変化することが分かった。
さらに「斜めに浸ける」や「2箇所浸ける」のように浸け方を変えると、
市松模様や柔らかいグラデーションなど、全く新しい表情のパターンが生成される結果となった。

これまでも日本には、糸を部分的にマスキングして染め分けてから織ることでかすれた柄を生み出す「絣織(かすりおり)」という手法がある。
図案をもとに緻密に模様や柄を生み出す、こうした伝統的な染め方に対して、
芯材の太さや染める角度だけで表現する手法は、より原始的なプロセスともいえる。
そして、自然が生み出す柄や模様とも重なる解釈ができるかもしれない。

Collaborator:
Yosuke Matsushita
Takahiro Fukino
Photographer:
Masahiro Ohgami
2024.04