chuwan

樂焼は土の表情を最大限に生かすべく、轆轤(ろくろ)ではなく、
自らの手でかたち作る「手捏ね(てづくね)」によって成形される。
それ故に、茶碗の形状が綺麗な回転体ではなく、不均一なフォルムに仕上がる。
この特徴を最大限に生かした展示方法を模索していく中で、茶碗を宙に浮遊させ、回転させることを考えた。
そこで、電磁石と永久磁石を複数組み合わせ、それぞれの「反発する力」と「引き合う力」のバランスによって、
まるでリニアモーターカーのように浮上させる仕組みを採用した。
茶碗の高台を厚めに仕上げてもらうことで底部に磁石を仕込むことができ、
電気浮遊装置を組み込んだ展示台から7mm浮かせる状態が可能となった。
さらに、展示台から微弱な風を送り続けることで茶碗がゆっくりと回転する。

鑑賞者が展示室に入ると、まずは背面が面発光していることで茶碗が逆光の状態となり、シルエットの変化が強調される。
さらに奥に歩んで横から茶碗を眺めると、今度は順光のライティングとなることで
釉薬や貫入、そして凹凸の変化などを感じ取ることができる。
それは「手の痕跡」という、ひとつの茶碗の中を流れる「時間」を表出させたような展示方法となった。

Collaborator:
Arata Nishikawa
Chihiro Yamamoto
Photographer:
Akihiro Yoshida