d60 handball
19世紀の終わりに北ヨーロッパで誕生し、1917年に現行ルールとなって以来、
現在では世界で209の国と地域の協会が国際ハンドボール連盟(IHF)に登録されており、
テニスやサッカーに迫る規模に拡大している。
この競技のさらなる発展を目的に、デザインされたIHF認定公式球。
ハンドボールには様々な種類のスピンをかけたパスやシュートがあるが、
その際にはボールのグリップ力が重要なため、粘着力の高い「松ヤニ」が使用されるケースが多い。
一方で、この松ヤニが体育館の床を汚してしまったり、怪我の原因になることもあり、その対応が検討されている。
これらの課題を解決し、競技人口をさらに増やしていくために、
IHFからの要望に基づき「松ヤニを使わなくてもグリップ力のあるボール」の開発がはじまった。
「タイヤの溝」や「ヤモリの足の裏」など、吸着力を高める表面テクスチャーのリサーチが行われた結果、
機械のスイッチや工具のグリップ部分などに使用される「ローレット加工」の考え方を参考にした、
60個の三角形で構成したパネル構造が採用された。
パネルとパネルの継ぎ目の盛り上がり部分は硬く設計し、パネルの中央部は柔らかくすることで、
その「段差」が握りやすさを生み出す。
従来は五角形と六角形が混在していたが、全てを三角形にすることで、
ボールを握った際のバランスを均等にすることができた。
また、パネルの接合はこれまでの手縫製から、パネル同士を接着する組み立て方法に変更。
結果的に、より精度の高い形状が安定して製造できるようになった。
表面素材は、様々な種類のゴムや樹脂、ゲル系の素材などが検討されたが、
最終的に採用されたのは、手の汗を多孔質な表面が吸い込むことで吸着する性質をもった合成樹脂。
これはベタつきが少ないために汚れにくく、しっとりとした独特の触り心地をしている。
これらの検討を経て誕生したこのボールによって、今後ハンドボールというスポーツがより安全かつ平等で、
多くの子供たちにも開かれた競技となることを願っている。