siki

使用する米や水はもちろん、酵母の種類や火入れの回数やタイミング、そしてそれを手がける杜氏や
蔵によっても味が大きく異なる日本酒。この複雑さと奥深さが魅力である一方で、
それが「分かりにくさ」につながり、普及の足かせになっているとも言われる。
そこで、日本酒が主に4つのタイプに体系化されることに着目し、それぞれに適した4種類のグラスを
デザインすることに。そして、それらのグラスに合わせて4種類の日本酒を宮城県の寒梅酒造に
新たに作ってもらうことで、より手軽に、最適なカタチで日本酒を楽しめることを考えた。

1. keikai
軽快で滑らかな飲み心地の、生酒や本醸造など。
長くて口が狭いグラスのため、香りがゆっくりと散るのを楽しみつつ、
傾けると細い流れが勢いよく舌の奥まで届くことですっきりと飲むことができる。

2. koku
味わいが深く、コクのある純米酒など。
下部の膨らみによってグラス内に香りを留め、風味を長く楽しむことができる。
また、少量ずつ口の中に日本酒が導かれる形状のため、
まるで「お猪口」のように旨味とコクを引き出しながら、ちびちびと楽しめる。

3. kaori
香りの高い大吟醸、吟醸酒など。
ラッパ型の広い口径は、まるで「盃」のように香りを短時間で拡散させる。
口に流れ込む量も多く、一気に口の中で味わいが広がることで華やかさを強調する。
また、液面の表面積が大きいために空気と多く触れあい、酸化の促進による香りの変化も楽しめる。

4. jyukusei
熟成された味わいの古酒、長期熟成酒など。
アルコール臭が適度に飛び、重厚な味わいもなめらかに感じる形状。
濃密な古酒の香りを必要以上に強調させないことで、熟成酒の持つ本来の風味を楽むことができる。

指が触れる部分から体温が伝わることを軽減させるため、ステムはもとより、グラス本体のふくらみ部分を
あえて他の箇所よりも肉厚に成形した。いずれのグラスも0.5合が注がれると綺麗なバランスに見え、
香りが立つのに充分な空間が確保されることを意識した。また、グラスを升の中に入れて溢れるまで注ぐ
「盛り切り」をするとちょうど1合となるように設計。グラスの台座は升の内寸に合わせた直径に設定し、
升に入ったグラスはちょうどステムの部分が隠れる高さとなることで、
器部分が液面に浮かんで見えるようになった。

Client:
寒梅酒造
Collaborator:
Mayuka Henmi
Shintaro Monden
Photographer:
Akihiro Yoshida
2017.09